【ジュニアサッカー】「練習では上手いのに試合で消える」のはなぜ?小学生がボールに関わる機会を増やす首振りとポジショニング
- 試合でボールに触れない子の多くは、味方を助けようとして駆け寄り、マークを連れてきてパスコースを消してしまう健気な間違いが原因。
- 味方がボールを持ったら駆け寄るのを一歩ガマンし、相手ディフェンダーから離れた斜め奥のスペースに顔を出す。
- 「ボールが味方から味方へ転がっている1秒間」に首を振って周りの景色を見る習慣をつけることで、動き出しの判断が劇的に早くなる。
コーンを交わすドリブル練習では、チームの誰よりもステップが軽やかでタッチも柔らかい。
対面パスの精度もピカイチで、リフティングも何百回と軽々とこなしてしまう。
「普段の練習ではあんなに上手いのに、いざ週末の試合になるとどこにいるのか分からないくらいボールに触れないまま終わってしまうんです……」
ベンチの脇で、グラウンドを走る我が子の姿をじっと見つめながら、深いため息をついていたお父さんの姿を私は今でも鮮明に覚えています。
「もっと走れ!」「ボールを迎えに行け!」
グラウンドの外から飛ぶ大人の声に応えようと、あの子はピッチの上を汗だくになって走り回っていました。でも、必死に走れば走るほどなぜかボールから見放され、気づけば一度も良い形でボールを触れないまま試合終了のホイッスルが鳴ってしまう。
あの子はなぜ、試合になると「消えて」しまっていたのでしょうか。その理由は、技術不足でも走力のなさでもありませんでした。あの子の「視線の向き」と「走り出した方向」にあったんです。
一生懸命な子ほどやってしまう「健気な間違い」
ベンチからその男の子の視線と体の動きをじっと観察していて、ハッと胸を突かれた瞬間がありました。
味方のディフェンダーが相手からボールを奪い、前を向いたまさにその瞬間です。
あの子は「早くパスをもらおう!」「味方を助けに行かなきゃ!」と一生懸命になって、ボールを持っている味方に向かって全力でまっすぐ駆け寄っていったんです。
……これ、実は真面目で優しい子ほどやってしまう、とても健気な間違いなんですよね。
味方を助けようとボール保持者へ一直線に駆け寄ることで、自分にマークについている相手ディフェンダーも一緒に引き連れていってしまう。その結果、ボールの周りが敵と味方でギュウギュウに密集してしまい、パスの出し手からすると「相手がすぐ目の前に密集していて、怖くてパスを出せない」という最悪の状況を、自分から作り出してしまっていたんです。
あの子はサボっていたんじゃない。一生懸命助けに行こうとして、自分からパスコースを消してしまっていたのでした。
「ボールに駆け寄るのを、一歩だけガマンしてみよう」
それに気づいてから、私はハーフタイムにその男の子を呼んで、耳元でそっと声をかけました。
「味方がボールを持ったら、ボールに向かって走るのを一歩だけガマンしてみてごらん」
「少し斜め後ろや横のスペースに立って、相手ディフェンダーから少し離れて待ってみて。そうすれば、味方の目からお前の顔がパッと見えるようになるから」
そして平日の対面パス練習では、「ボールが味方から味方へ転がっている時間(わずか1秒間)に、パッと首を振って横の景色を見る」という小さな工夫を徹底して繰り返しました。
自分の足元にボールが来てから周りを見ようとしても、相手が突っ込んできてパニックになってしまいます。ボールが移動している短い間に周囲の相手やスペースをチラッと確認しておくだけで、味方がトラップした瞬間に「どこに顔を出せば一番パスをもらいやすいか」が、頭の中で自然と描けるようになるのです。
次の試合、お父さんが立ち上がった瞬間
迎えた次の公式戦。あの子のプレーは、まるで別人のようでした。
自陣で味方がボールを奪った瞬間、あの子はボールに飛びつくのをグッと我慢して、相手ディフェンダーの死角から斜め前方の広いスペースへスッと顔を出したんです。
パスの出し手と目が合い、相手ディフェンダーの間を抜いて足元にスーッと美しいパスが通った瞬間、ベンチ脇で見ていたお父さんが思わず「おおっ!」と声を上げて立ち上がりました。
試合後、お互いに照れくさそうに、でも誇らしげにハイタッチを交わしていた親子の姿を見て、私の胸も熱くなりました。
「もっと走れ!」と叫ぶ前に、あの子の準備を見てあげてほしい
試合でボールに触れない我が子を見ると、つい焦って「もっと走らなきゃダメだ!」「大きな声で呼べ!」と叫びたくなってしまうかもしれません。
でも、あの子はすでにピッチの上で、どうすればいいか分からず必死にもがいているのです。
普段の練習でボールを扱う技術がある子なら、周囲を見るタイミングと「立ち位置のほんの少しの工夫」を知るだけで、ピッチの上で見違えるように輝き始めます。
今週末の試合、ボールだけを追うのではなく、あの子が味方の状況を見てどんな準備をして立っているか、その小さな動き出しに目を向けてあげてください。
大人がその小さな工夫に気づいて認めてあげられたとき、あの子の足元には、面白いようにボールが集まり始めるはずです。
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